2018-04-15から1日間の記事一覧

刀ミュ「つはものどもがゆめのあと」考察&感想

これは作中で頻出される蓮の花の例えが表すように、対をなす光と影、陰と陽、表と裏の織りなす物語。 対になっているものとしては、三日月宗近と小狐丸、今剣と岩融、髭切と膝丸、太平記と義経記、実在と非在など枚挙に暇がないが、これらを通して『正しい歴…

小ネタ集

一記事にまとめるほどではなかった覚書たち。 ●源頼朝の旗挙げの経緯については、劇中の台詞にもある「以仁王の令旨(もちひとおうのりょうじ)」について調べてみることをお勧め。 ●水鳥の羽音で撤退する平家軍:実際には甲斐源氏・安田義定の夜襲(頼朝た…

「かえってきたら カンジンチョウのけいこのつづき しましょうね」

今作の最後を飾る今剣のこの言葉は、自身が成長して帰ってくることの決意を表明するのと同時に、相棒である岩融の成長を確信しているものでもある。 前述したとおり、彼らは勧進帳の記憶を持たない。今回の出陣で目の当たりにこそしたが、彼らが実際に経験し…

修行へ旅立つ今剣

阿津賀志山異聞では、かつての主への思いの深さ故に、うつむき、背を丸め、愛惜に泣き叫び、仲間たちにさえ刃を向けようとした今剣。 その彼が、つはもの~では常に胸を張り、決してうつむくこと無く、涙こそ禁じ得ずとも全てを見届けた。その成長は瞠目に値…

「今日の畑当番は、逃がしませんよ」

「私はあなたのやり方が正しいとは思えない。ですが……間違っているとは思わないことにします」 ラストシーンでの三日月と小狐丸とのやり取り。 結局のところ自らの口では何も語ろうとしなかった三日月への、これは小狐丸なりの思いやりに満ちた最大限の肯定…

「あの鳥は北へ向かったか。まずは北へ向かうとするかのう」

「地の果て、海の果て、その向こうの大地まで、逃げ続けてやろうぞ!」 義経が衣川館を逃げ延びたとする伝説は枚挙に暇がない。義経は蝦夷に逃れたとの「北行伝説」が、八戸や三厩、北海道の松前など各所に伝わっている。変わり種としてはモンゴル平原でチン…

「歴史とは水のようなもの。始めから形など存在しない」

歴史は流動的なものであり、事象の連なりが必ずしも確定されたものではないことが三日月の口から語られる。この「歴史とは何ぞや」という認識の齟齬が、小狐丸、ひいては審神者と三日月宗近との見解の相違となっている。 おそらく審神者や小狐丸の認識は、時…

しくしくくれくれ……

頻く頻く くれくれ頻く頻く くれくれ 仮初めの宴 泡沫の花火生まれては消えゆく春の夢 誰が為の 花の台 頻く頻く くれくれ頻く頻く くれくれ 纏う黒き衣 泡沫の役目満ちては欠けてゆく 玉桂 半坐わかつ 花の台誰が為にそこにある宿世わかつための 花の台 〇…

三日月と泰衡の語らい

全てを打ち明けることで泰衡に「正しい歴史」を歩ませようとする三日月。頼朝に対する洗脳行為などはあくまで最終手段であり、基本的には話して諭すスタンスであることが窺える。「義経殿のこと……くれぐれも」という泰衡の台詞があるため、この時既に三日月…

豹変した頼朝とその真相を探る小狐丸

三日月が陰で何をしているのか。その一端に触れる小狐丸。「このようなこと、許されると思うのか」という台詞から察するに、どうしてこんなことをしたのかが疑問なのであって、どうやってこんなことが出来たのかは問題ではない様子。 つまり人間一人洗脳し操…

安宅の関にて

三日月が岩融に安宅の関のやり取りを見せるのは、前述したとおり、岩融にはその記憶が無いから。 弁慶が諳んじる勧進帳の文言にも、「(数千)蓮華の上に座す」という言葉が確認できる。やはり「一蓮托生」という言葉は、この作品の要諦を成すキーワードなの…

小狐丸の心情

揺るがないのは 我らの使命だから守るべきこと疑うこと無く照らされた道を歩むことに迷いはない此処に在る意味 問うまでもないただひたぶるに 守るべきもの 小狐丸の認識がどういったものかがここで語られる。「清」と「濁」を併せ呑む三日月に対し、ひたす…

髭切に新たに生じた記憶について

頼朝と三日月のやり取りが、記憶として髭切に流れ込んでくる。 実際の刀剣・髭切が新たに経験・観測した事象が、刀剣男士・髭切に記憶としてフィードバックされるこのシーンは、三日月宗近の行動原理を考える上で非常に重要。 刀剣男士として顕現した後でも…

源平合戦

源平合戦のシーンで描かれる、一ノ谷、屋島、壇ノ浦という流れは、義経記(ぎけいき)の記述に準拠している。 義経記における平家追討戦の記述は「御曹司(義経)、寿永三年に上洛して平家を追ひ落し、一谷、八島、壇浦、諸所の忠を致し、先駆け身を砕き、終…

今剣を傷つけぬよう髭切、膝丸に願い出る岩融

自身の存在に疑念を抱き、今剣にはそれを気づかせまいと、髭切、膝丸に働きかける岩融。まるっきり息子を気遣うお父さんである。好き。 あらぬ誤解を受けながらも、それをやんわりふんわりと受け止め、逆に岩融を気遣いさえする兄者。すげー好き。 刀ミュに…

「あの鳥のように飛べたなら」

濁りに染まぬ蓮清らかに咲き誇る 一度(ひとたび)巡れば蓮に心寄せ託されるは生涯の約束 ぽん……ぽん…… ……聞こえるか?花の咲く音 開く音…… この花のように清く咲くその下には濁る泥水この花のように清く在るその裏には…… 美しい旋律。思いがけず差し出され…